●Daedelusの“Invention”というアルバムをしばらく聴いている。ジャンル的にはエレクトロニクスでおそらく実験音楽のたぐいなのだけど8曲目の“Experience”が個人的には恐ろしいほど寂しさを掻き立てられるサウンドだった。
子どもの頃、今は廃盤となってしまったゴンチチの『VACANCE』を母の運転する車でよく聴いていた。なかでも11曲目“Ducky Hip”という曲とその次の曲でありラストを飾る“Walts in Blue”が大好きだった。そのアルバムを聴くたび、青空のよく合う南国にいるかのようなひたすら日向の音楽であるducky〜が終わったあと、ポップで軽快なテンポではありつつアコーディオンの静かなイントロで始まるwalts〜がくるものだから、アコーディオンの音に対して「真っ盛りをすこし過ぎた、あるいはたそがれどき」のイメージを子どもながら完璧に学習してしまった。Daedelusの話に戻ると“Experience”にもミニマルで単調なコードの繰り返しではあるのだがアコーディオンが使われていて、時間経過がどういうものなのかを植え付けられた原体験を呼び覚ましてくる。コンパクトでちょっと映画音楽っぽいのも余計にそれを引き立てるのかもしれない。